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📘 はじめに|労基法を「簡単」と侮らない
- 労働基準法(労基法/労規法)は職場のルールを定めた法律。一言でいえば「労働条件の最低限度の基準」を定めたもの。
- 社会人には馴染みがあり簡単に見えるが、判例・行政通達が山ほどあり、本試験では意外と点が取りにくい科目。「労基法は簡単」と言ううちはまだ合格レベルではない、とも言われる。
🎯 最重要の大原則 =「実態判断」
社労士試験は形式判断ではなく実態判断(ほぼ100%)。契約の名称(請負・委任など)や肩書きではなく、実際の使用従属関係で判断する。労働者を保護しやすくするための考え方。
📝 条文を読むコツ(語尾・列挙に注目)
・「〜しなければならない」=義務規定(違反に罰則あり)/「〜努めなければならない」=努力義務規定(罰則なし)
・限定列挙列挙されたものに限る / 例示列挙「その他の〜」=例として挙げただけで他も含む
法1条
労働条件の原則
条文労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきものでなければならない。②この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。
「労働条件」とは
賃金・労働時間はもちろん、解雇・災害補償・安全衛生・寄宿舎等に関する条件を全て含む「職場における一切の待遇」。ただし雇入れ(採用)は含まれない(採用は企業の採用自由の原則。労基法は入社後の話)。
「最低のもの」=低下の禁止 & 向上の努力義務
定めた基準は最低ライン。「労基法にこう書いてあるから」を理由に労働条件を下げてはいけない。向上は「努めなければならない」=努力義務。なお法1条・2条は訓示的規定で罰則なし(罰則は3条以降)。
例:労基法が「1日8時間まで」と定めているからといって、もともと所定労働時間が7時間30分だったのを8時間に引き上げるのはダメ。
※ただし不景気・倒産危機など他に決定的な理由があれば、労働条件を低下させても本条違反にならない(労基法は会社が倒産するまで保護するものではない)。
用語の区別:法定労働時間=法律上限(1日8h・週40h)/所定労働時間=その企業が定めた労働時間(7.5h等もOK)。
法2条
労働条件の決定
条文労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。②労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。
主語は「労働者及び使用者」
放っておくと使用者が強くなりがちなので、あえて「対等の立場」と明記。②の遵守義務の主語も「労働者及び使用者」両方。選択式で「使用者は」だけの肢は誤り。
労働協約・就業規則・労働契約
| 用語 | 内容 |
| 就業規則 | 職場のルールブック(始業時刻等)。 |
| 労働契約 | 個々の労働者と使用者の契約。 |
| 労働協約 | 労働組合と使用者の間で締結された書面による労使間の合意。労働組合がない会社には存在せず、原則組合員にしか適用されない。 |
法3条
均等待遇
条文使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
限定列挙 と 例示列挙 の区別がカギ
限定列挙国籍・信条・社会的身分の3つ「だけ」が理由(「等」が付いていない)。
例示列挙「賃金・労働時間その他の労働条件」=労働条件全般を含む。
※法3条は義務規定。違反すれば罰則あり(3条以降は罰則あり)。
3つの理由の中身
| 国籍 | 二重国籍・無国籍を理由とする差別も禁止。 |
| 信条 | 特定の宗教的・政治的信念。思想上の信念も含む。 ※信条に基づく行為が企業秩序・職場規律を侵害した場合の懲戒処分は本条違反にならない。 |
| 社会的身分 | 生来的な地位(門地・人種など)。 ※後発的理由(正社員とパート、職員と工員など)は社会的身分に含まれず、差別しても本条違反にならない。 |
差別的取扱いとは:不利に扱うことだけでなく、有利に扱うこと(逆差別)も含む。ある人を有利にすれば別の人が不利になるため。
法4条
男女同一賃金の原則
条文使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。
「女性であること」+「賃金について」に限定
「女性」とだけ/「賃金について」とだけ書いてある点に注意(「等」「その他の条件」ではない)。禁止されるのは性別のみを理由とした差別。
違反にならない例:職務・能率・技能など能力による賃金差(男女問わず生じるもの)。
「賃金」=法11条の賃金。額そのものだけでなく、賃金体系(賃金表)・賃金形態(月給/時間給)の差別も含む。
例:男性は月給・女性は時間給/男女で別の賃金テーブルを使う → ダメ。有利に扱う逆差別もダメ。
法5条
強制労働の禁止
条文使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
「不当」≠「不法」
「不当」は「不法」より広い概念。法律違反でなくても「これはおかしい」と思われるものも含まれる。
いつ違反が成立するか
条文は「労働を強制してはならない」=労働者が現実に労働する前でも、強制労働させようとした時点で違反成立。「強制して労働させてはならない」ではない点に注意。
例:脅迫して労働させようとした時点で5条違反成立(実際の労働開始時点ではない)。
⚠ 労基法で最も重い罰則
5条違反 = 1年以上10年以下の懲役、又は20万円以上300万円以下の罰金(労基法で最重)。
覚え方 👉 「E(いー)兄さん(23)」= 1年〜10年・20万〜300万
法6条
中間搾取の排除(ピンハネ禁止)
条文何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。
主語は「何人も」
使用者に限らずどんな人も対象。「業として利益を得る」=営利目的で同種行為を反復継続すること。1回でも反復継続の意思があれば違反。本業か副業かは問わない(実態判断)。
法律で許される例:職業安定法・船員職業安定法に基づく職業紹介(人材紹介)などはOK。
派遣 と 労働者供給 の違い(重要)
| 労働者派遣 | 労働者供給 |
| 供給元と労働者 | 労働契約あり(自己の労働者) | 支配従属関係のみ(労働契約なし=赤の他人) |
| 中間搾取に | 該当しない(他人の就業への介入でない) | 該当する(完全なピンハネ) |
※違法な派遣事業でも、派遣行為自体は6条の中間搾取には該当しない(他の法律違反にはなる)。
※労働者供給は原則禁止だが、労働組合等が厚労大臣の許可を受けて行う「無料」の労働者供給事業のみ例外的にOK(営利でないため)。
⚠ 労基法で2番目に重い罰則6条違反 = 1年以下の懲役、又は50万円以下の罰金。
法7条
公民権行使の保障
条文使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使・公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。
拒否は不可/時刻変更は可
請求を拒んだ時点で7条違反。ただし「今は忙しいので後で」と時刻を変更するのはOK。
「該当しないもの」を覚えるのがコツ(少ない方を暗記)
公民としての権利 に該当しないもの | ① 個人としての訴権の行使 ② 他の立候補者のための応援等の選挙活動 |
公の職務 に該当しないもの | ① 非常勤の消防団員の職務 ② 予備自衛官の防衛招集・訓練招集 |
該当しない4つの覚え方
「大やけの場で個人的な応援は非常識、招集」
大やけ=公民権行使の話だと思い出すキーワード/個人=個人の訴権/応援=他候補の応援/非常=非常勤消防団員/招集=予備自衛官の招集
※ゴロには「何のゴロか」を示す言葉も入れると芋づる式に思い出せる。
給与の有無:権利行使に要した時間を有給/無給どちらにするかは当事者間の取り決めによる(ノーワーク・ノーペイの原則)。無給でも違反にならない。
適用
適用事業(属地主義・事業場単位)
原則:1人でも労働者を使用する事業に適用
業種を問わず、労働者を1人でも使用すれば適用(アルバイトも含む)。所長1人だけの個人事務所は労働者がいないので適用なし。
属地主義
日本国内で行われる事業なら、使用者・労働者が外国人でも適用(属地主義)。
例外:外国大使館・米軍基地の施設等は適用されない(法令・条約に特別の定め)。
事業場単位で判断(場所的観念)
法人全体ではなく事業場ごとに適用。東京の店舗と大阪の店舗は別事業。原則は場所的関連で決める。
| 例外①(同一場所でも分割) | 同じ場所でも著しく労働態様が違う部門(工場内の診療所・食堂等)は別の独立した事業とみなす。 |
| 例外②(分散でも一括) | 場所的に離れていても規模が著しく小さく独立性がないもの(新聞社の通信部等)は、直近上位の機構と一括して1の事業とする。 |
116条
適用除外
船員 = 一部適用除外(要注意)
船員は船員法で規律されるため労基法は原則適用除外。ただし1条〜11条・罰則の一部等は「除き」とされ、船員にも適用される(=完全な適用除外ではない)。条文の「除き」=裏を読めば適用あり。
同居の親族のみ/家事使用人 = 全面適用除外
同居の親族のみを使用する事業と家事使用人は全面適用除外。
注意①:同居の親族「のみ」がポイント。他人を1人でも使用すれば、その他人には労基法が適用される。
注意②(家事使用人):家事使用人かは誰の指揮命令下かで決まる。
・家族の指揮命令下で家事に従事 → 家事使用人(適用除外)
・家事代行会社に雇われその指揮命令下で家事 → 労働者(労基法適用)
公務員
| 区分 | 適用 |
| 一般職の国家公務員 | 全面適用除外 |
| 行政執行法人の職員(造幣局・国立印刷局等) | 全面適用 |
| 一般職の地方公務員/地方公営企業の職員 | 一部適用 |
全面適用除外の覚え方
「労(ろう)国家が家事で同居する」
労=労基法の全面適用除外の話/国家=(一般職の)国家公務員/家事=家事使用人/同居=同居の親族のみ
※行政執行法人の職員は「全面適用」なので混同注意。
法9条
労働者の定義
条文この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
2つの要件
① 事業に使用される(職業の種類は問わない=肉体労働でも精神労働でも可)。契約形式(雇用・請負・委任)に関わらず、実態において使用従属関係(指揮命令下にあるか)で判断。
② 賃金を支払われる(無償のボランティアは労働者でない)。
労働者でない例:友人の引っ越しを手伝って1万円もらった → 「事業に使用される」に当たらず労働者でない。/法人・団体の代表者など使用者側の者。/請負契約で働く一人親方の大工。
法10条
使用者の定義
条文この法律で「使用者」とは、①事業主、②事業の経営担当者、③その他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をするすべての者をいう。
使用者は3種類
| ①事業主 | 経営の主体。個人企業は企業主個人、法人の場合は法人そのもの(代表取締役ではない)。 |
| ②事業の経営担当者 | 経営一般に権限と責任を負う者。代表取締役・理事・取締役など。 |
| ③事業主のために行為をする全ての者 | 人事・給与・労務管理や業務命令・指揮監督を行う者。1人でも部下を持ち業務命令の権限があれば使用者(課長レベルでも該当しうる)。 |
労働者と使用者は「相対的な概念」
9条の労働者でも、ある事項について権限と責任を持てば、その事項では使用者になりうる。
例:課長は…平社員から見れば使用者/部長から見れば労働者。1人だけ見ても決まらない。
まとめ
横断まとめ(試験で差がつくポイント)
罰則の重さ順
| 順位 | 条文 | 罰則 |
| 最重 | 法5条 強制労働の禁止 | 1年以上10年以下の懲役 or 20万〜300万円の罰金(「E兄さん23」) |
| 2番目 | 法6条 中間搾取の排除 | 1年以下の懲役 or 50万円以下の罰金 |
取り違えやすいポイント
・法1条/2条は訓示的規定で罰則なし/3条以降は罰則あり。
・不当 ≠ 不法(不当の方が広い)。
・限定列挙国籍・信条・社会的身分(法3条)/女性・賃金(法4条)
・実態判断が全分野の軸(労働者性・家事使用人・強制労働など)。
・派遣=中間搾取でない/労働者供給=中間搾取になる。
・船員=一部適用除外/同居親族のみ・家事使用人・一般職国家公務員=全面適用除外(行政執行法人職員は全面適用)。
・法人の事業主=法人そのもの。代表取締役は「②経営担当者」。
・労働者と使用者は相対的概念(課長の例)。
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